「家業の継承」から「世界への挑戦」へ──プロ人材が伴走する、老舗テキスタイルメーカーの米国進出

松井商店取締役2名と松井商店のエプロンを着用したプロ人材機構高橋啓とbatoon高橋夏奈氏
cotton松井のエプロンをつける(左)プロ人材機構代表取締役社長高橋啓と(右)BATOON代表高橋夏奈氏(中央2人ともに松井商店取締役)松井俊介氏、松井夕佳氏

オリジナルのテキスタイルを用いて、エプロンや割烹着などを自社デザイン・製造・販売する「株式会社松井商店」。その家業を継ぐ準備を進めているのが、市民ランナーとしても活動し、プロ人材機構がスポンサードする松井俊介さんと、従兄弟でEC部門などを担う松井夕佳さんです。

事業承継という大きな転換期を前に、松井商店は「米国進出」という次なる一手に挑戦します。その架け橋となるのが、日本の中小メーカーや工芸品の海外進出支援プラットフォーム「Gojiai」を運営するBATOON代表の高橋夏奈さんです。

両者は、事業承継を人材面から支援する「株式会社プロ人材機構」の代表・高橋啓の紹介によってつながりました。

単なる「人と人の紹介」で終わらせない、プロ人材機構の伴走支援とは何か。そして、北米最大規模のホールセール展示会「NY NOW」出展に向けた新商品・デニムエプロン開発の裏側について、4名に熱く語り合っていただきました。


【参加者】
高橋 夏奈さん(BATOON 代表/Gojiai 主催)
松井 俊介さん(株式会社松井商店 取締役/事業承継後継者)
松井 夕佳さん(株式会社松井商店 取締役/EC部門・米国進出向けデニムエプロン開発担当)
高橋 啓(株式会社プロ人材機構 代表取締役社長)


事業承継のリアルと「次の一手」

株式会社松井商店・取締役のお二人は従兄弟同士だ。(左)松井夕佳氏(右)松井俊介氏
株式会社松井商店・取締役のお二人は従兄弟同士だ。(左)松井夕佳氏(右)松井俊介氏

── 高橋(啓): 松井俊介さんは現在、市民ランナーとして走りながら、松井商店の次期後継者として家業を継ぐ準備を進められています。まずは、事業承継にあたって抱えていたリアルな課題感からお聞かせいただけますか。

松井(俊): 松井商店は伝統的なものづくりを大切にしながら、自社デザイナーによるオリジナルテキスタイルのエプロンや割烹着を展開してきました。ただ、自分が家業に入るにあたって、「これまでのやり方をそのまま続けていく」だけでなく、自分らしい挑戦をしていきたいと思っていました。国内市場が縮小していく中で、次の10年、20年を生き残るためには、ただ引き継ぐだけでなく「新しい挑戦」という一石を投じる必要があると感じていたんです。

松井(夕): 私は従兄弟で取締役という立場ですが、既存のお客様を大切にする一方で、新たな顧客層や市場を開拓しなければならないと常に思っています。現在担当しているEC部門もそんな思いで立ち上げ、日々の運営をしています。

── 高橋(啓): 守るだけでなく、攻めの一手が必要だと。

松井(俊): はい。しかし、具体的にどこへ、どうやって舵を切ればいいのか五里霧中でした。スポンサーとして僕のラン活動を支えてくれている啓さんは、企業の課題を抽象化して解決できる経営人材を繋ぐプロフェッショナルなので、いつも弊社のことも考えてくれていて。「松井商店の課題を解決する手掛かりとして、海外進出はどうか」と言って、出会ったのが高橋夏奈さんでした。

点と点がつながった「海外進出」という選択肢

松井商店のエプロン
テキスタイル業から始まった松井商店は、オリジナルプリントが自慢

── 高橋(啓): 俊介さんが「松井商店の次の展開」を探していると伺って、頭に浮かんだのが、日本の中小メーカーや伝統工芸の海外支援を行っているBATOONの高橋夏奈さんでした。夏奈さん、最初に松井商店のお話を聞いたときの印象はいかがでしたか?

松井商店のオリジナルプリント図録を見る松井商店取締役
毎年発売される新柄を記録しています。その数数万パターン

高橋(夏): 松井商店さんのプロダクトを拝見したとき、デザインの独自性と品質へのこだわりを一目見て感じました。エプロンや割烹着には、日本特有の「暮らしに寄り添う機能美」があります。この日本の丁寧なものづくりは、アメリカのライフスタイル市場でも絶対に響く、ニッチな強みになれると直感しました。

BATOON代表・高橋夏奈氏
BATOON代表・高橋夏奈氏

松井(俊): 最初に夏奈さんを紹介されたときは、まさか自分たちが「アメリカ進出」に挑戦するとは夢にも思っていませんでした。海外への販路開拓は、大規模なコストがかかると思い込んでいたので。

── 高橋(啓): まさにマインドセットの転換ですよね。松井商店さんのプロダクト力と、夏奈さんの海外支援ノウハウが合わされば、次世代へ受け継がれる日本のものづくりが世界で活きる道が開けるのではと思いました。

岡山デニムで作る「育てるエプロン」

NY NOW出品用の新作デニムエプロンとデニムギャルソンエプロン。(左)プロ人材機構代表高橋啓(右)松井商店取締役松井俊介氏
NY NOW出品用の新作デニムエプロンとデニムギャルソンエプロン。(左)プロ人材機構代表高橋啓(右)松井商店取締役松井俊介氏

── 高橋(啓): 今回、世界最大規模の展示会である「NY NOW」に出品するにあたり、「デニムエプロン」の開発を進められたそうですね。なぜこのプロダクトで挑戦しようと思ったのか、開発のプロセスも含めて教えていただけますか?

松井(夕): 私たちの会社には、新しいアイデアを受け入れ、自由にチャレンジさせてくれる土壌があります。今回もアメリカ進出に向けた新商品開発を、自由にやらせてもらえました。当社の主力商品はオリジナルプリントの女性用エプロンですが、米国のライフスタイルには馴染まないと思い、ゼロから作り上げました。グローバルでも評価が高い「岡山デニム」を使ってユニセックスデザインにしようと決め、日頃お世話になっている岡山の縫製工場の方に、デニムメーカーさんをご紹介いただくところから始めました。

商品開発について語る松井商店取締役松井夕佳氏
商品開発について語る松井商店取締役 松井夕佳氏

高橋(夏):米国の富裕層は、品質へのこだわりがあるので、海外でも人気の高い「岡山デニム」という素材を組み合わせたのは素晴らしいアイデアです。岡山デニム特有の色落ちや経年変化を活かせば、汚れや繕いすらも味になります。長く使える良質なものが好まれるので、経年変化を楽しむ「育てるエプロン」として紹介したいですね。

松井商店デニムエプロンタグYOROI
デニムエプロンに「YOROI鎧」のブランドタグが。ディテールにもこだわり満載だ

── 高橋(啓): 「NY NOW」は世界中からトップバイヤーが集まる場ですが、この「育てるエプロン」の魅力をどのように展示して伝える予定ですか?

高橋(夏): 経年変化の魅力を現地のバイヤーさんに直感的に伝えるために、あえて「新品のエプロン」と、実際に使い込んで色落ちし風合いが増した「育ったエプロン」を並べて展示しようと計画しています。日本の職人技による繊細な縫製と、使い込むほどに身体に馴染んでいく過程を直接見て、触れて感じていただきたいです。

作成中のGojiaiカタログを見る高橋夏奈さんと松井俊介さん
NY NOW出展者ブースで配るカタログを作成

松井(俊): それはバイヤーの目も引きそうです。今回、夏奈さんの「Gojiai」を利用させていただくことでリーズナブルに出展できますし、パンフレット用に撮影や税関書類も作成いただいたりと、本当に助かりました。

高橋(夏): 単独で海外の展示会に出展する場合、ブース代に加えて、言語の壁、物流、現地での設営やプロモーションなど、多大なコストと手間がかかります。Gojiaiでは、私たちが間に入ってそれらをワンストップでサポートし、複数の中小メーカーさんの商品をひとつのプラットフォームとして編集して出品しています。これにより、単独出展に比べてコストとリスクを最小限に抑えつつ、世界中のバイヤーからの一次情報をダイレクトに得られる「テストマーケティング」が可能になるんです。

── 高橋(啓): なるほど。「新しいことに挑戦できる自由な土壌」、そしてGojiaiの「コストを抑えて海外挑戦できる仕組み」が見事に噛み合ったわけですね。

紹介で終わらない、プロ人材としての「伴走」の価値

プロ人材機構 代表取締役社長高橋啓
プロ人材機構 代表取締役社長 高橋啓

── 松井(俊): 啓さんが夏奈さんを紹介してくださって本当に感謝しているのですが、他の事業承継案件でも、後継者を紹介するだけでなく、着任後も課題解決の相談に乗ったり、定着するまで伴走すると聞きました。

── 高橋(啓): 私たちの役割は、「紹介して終わり」のマッチング業ではありません。人が活きる道を一緒に探求し、挑戦に伴走することです。俊介さんがランナーとして限界に挑むように、ビジネスでも「米国進出」という高いハードルを越えるための伴走者でありたいと思っています。

高橋(夏): 啓さんが間に入って、松井商店さんの経営課題や次世代への継承という文脈を整理してくださったので、私たちBATOON側も「どのタイミングで、どうアメリカのマーケットにアプローチすべきか」という具体策を非常にスムーズに組み立てることができました。

松井(夕): 私もEC部門を担う立場として、今回の展示会で得たアメリカのトレンドやフィードバックを、今後のオンライン展開や新しい商品企画にどう活かすか、啓さんや夏奈さんに相談しながら進めていける環境はとても心強いです。

松井(俊): 幸い、私にはチャレンジを応援してくれる環境がありますし、啓さんと夏奈さんというプロフェッショナルが伴走してくれているので、自信を持って一歩を踏み出せました。

(左)株式会社松井商店 代表取締役 松井孝之氏は(右)松井俊介氏の実父
(左)株式会社松井商店 代表取締役 松井孝之氏は(右)松井俊介氏の実父

── 高橋(啓): それでは最後に、皆さんが今後どのような仕事を成し遂げたいかを教えてください。

高橋(夏): どんなに素晴らしい技術や伝統があっても、今の時代や新しい市場に合わせなければ消えていってしまいます。日本のものづくりの可能性を信じ、世界との架け橋になり続けることが私の使命だと思っています。

松井(夕): 今回のデニムエプロンのように、伝統を土台にしながらも新しいアイデアを形にし、世界中のお客様に松井商店の魅力を届けていきたいです。

松井(俊): 僕は、家業の看板や過去の成功体験を大切にしながら、「未知の領域に覚悟を持って泥臭く挑戦し続けられる人」になりたいです。松井商店の新たな歴史を創ったり、マラソンの大会にもチャレンジしたり、子供にも挑戦することの楽しさを伝えられる親になりたいですね。

── 高橋(啓): 皆さん、素晴らしいお話をありがとうございました。今回の米国進出プロジェクトが、日本のものづくりと事業承継の未来を照らす大きな光になるよう、プロ人材機構も伴走し続けたいと思います。


【プロフィール】

高橋 夏奈(たかはし・かな) BATOON 代表。日本生まれ。大手アパレル企業での経験を経て独立し、日本の中小メーカーや伝統工芸品の海外進出支援プラットフォーム「Gojiai」を運営。NY NOW等の米国展示会への出品サポートや、現地のライフスタイルに合わせたマーケティング支援で数多くの実績を持つ。

松井 俊介(まつい・しゅんすけ) 株式会社松井商店 取締役/次期後継者。オリジナルテキスタイルを用いたエプロンや割烹着などの企画・販売を行う家業の事業承継を進める傍ら、実力派の市民ランナーとしても活動中。プロ人材機構がその挑戦をスポンサードしている。

松井 夕佳(まつい・ゆか) 株式会社松井商店 取締役。俊介氏の従兄弟であり、同社のEC部門などを統括。今回の米国進出プロジェクトにおいては、現地市場のニーズを見据え、オリジナルテキスタイルと岡山デニムを掛け合わせた「育てるデニムエプロン」の開発を主導している。

高橋 啓(たかはし・あきら) 株式会社プロ人材機構 代表取締役社長。シニア世代や次世代の多様なロールモデルの発掘、事業承継・経営課題の解決に向けたプロ人材の伴走支援マッチングを広く手掛ける。松井俊介氏と高橋夏奈氏を引き合わせ、今回のプロジェクトに伴走する。


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