インタビュー『森 慶一郎』さん

―――――顧問やアドバイザリーとしての活動状況を教えてください

今は大手総合商社の社内ベンチャーの支援を中心に動いています。そこでは、蓄電池・太陽光発電関係の事業開発、新規事業の支援にあたっています。その中には、日本政府が他次世代技術として力を入れているペロブスカイト太陽電池関連の事業開発も含まれます。商社にとって非常にチャレンジングな領域なんです。顧問という立場ではありますが、私自身も社長のアシスタントとして実際に動いております、客先訪問の動向も非常に良くなってきていて手応えを感じています。この他3社でも活動をさせて頂いています。

―――――森さんのキャリアのスタートはメーカーでしたね。

もともと私は、新卒から34年ほど東芝で働いていたんです。最初の15年位は、電池ですとか、ディスプレイですとか、その他電子部品の海外セールスを担当していたんです。海外セールスにおいて一定の成果を上げて充実感はあったんですが、ある時、組織や事業を動かすところにもっと深く入り込みたいと思うようになりました。そんな折にチャンスがあって、事業開発系の部署に異動することになることになって新規事業を軸に業務に就くことになりました。東芝時代で関わった事業の中で思い出深い新規事業は、2000年代初めの次世代ディスプレイパネルの開発事業化プロジェクトというものです。そこで、広報やマーケティングを私が担当して様々なことに取り組みました。なのですが、事業化まであと一歩というところで事業が中止せざるを得ない状況になってしまったんです。ビジネスマン人生最大の筆舌に尽くしがたい経験でした。あの時のことは今でも鮮明に覚えています。ですが、その時の悔しさと言いますか、不完全燃焼の思いが、今、自分自身の仕事の柱となっている新規事業を支援するという動機になっているんです。

―――――メーカーから商社へ転職について

東芝の役職定年の年齢が見えてきた54歳の時に、生まれて初めて転職活動を始めました。転職エージェントにあちこち登録したんですけど、連戦連敗し続けました。半年ほど過ぎた頃に、あるエージェントの超絶優秀で有名な方がついてくれたことがラッキーでしたね。その方が1年間伴奏してくれて56歳で商社へ転職できました。東芝時代の最後10年間で半導体の事業に携わっていたんですが、担当の方から半導体というキーワードで商社の求人紹介を受けました。正直、商社ですから私じゃないでしょう?と思ったりもしたんですが、担当の方が、企業側に具体的な内情を聞き出してくださって求人票に書いている内容と求める人材が大きく違うことがわかりメーカーから商社への転職ができました。ただ、入社して1年たった頃、半導体ではなく、EV車のバッテリーに関わるサービス事業の立ち上げを提案し、その後、4年間にわたって、取り組みました。嘱託社員契約だったので5年が最長で、あと1歩で市場に出すというところまで到達したところで契約満了を迎えました。その事業のプレスリリースが、実は最近出たんです。私にとっては、 東芝時代の不完全燃焼から解放されたような、嬉しさがこみ上げた瞬間でした。

―――――現在の職場には、どのように繋がったのでしょうか?

商社時代に、社内SNSでペロブスカイト太陽電池というキーワードについて投稿をしたことがあったんです。その内容に目を付けたグループ会社の方から連絡があったのがきっかけでした。その後伺った東京ビックサイトの展示会場で、そのグループ会社の社長から、顧問やりませんかと声をかけられました。SNSをやっていなかったら、今頃路頭に迷っていたかもしれません。

―――――起業もされ、ご自身も経営者でいらっしゃいますね。

個人事業主でもいいと思っていたんですが、周囲の勧めもあって法人化を決めました。これまでの経験をいかして新規事業の支援。そしてシニアの仕事機会を創出することを支援してきたいと考えています。シニア機会クリエイターとして商標登録も行いました。私自身が54歳で転職活動をして次なる職に出会えるまで二年ほどかかりました。この国の、時に、年齢差別とも呼ばれるものについて考えさせられるものが大きかったというのが正直なところです。今の時点で、会社としての収益をあげているのは新規事業の支援業務ですが、シニアの支援は自分のできる範囲のところから行っていきたいです。そのためには、まず自分がSNSを通じて発信すること、自分が動いていることを世の中に発信することが大事だと思っています。

―――――これからの社会で求められるシニアとは?

これまでやってきた経験とこれからやっていきたいことのイノベーションができる人が求められると思います。成功体験だけでなく失敗体験も含めて経験を洗い出して、これからやりたいことやこの先のビジョンに近づくために何が必要かを考える。そこから自分の経験に足りないものを認識して、そこをどう補うかを考えて行動するというイノベーションです。これまで培ってきたものがあるシニアだからこそ、その掛け算ができますし、することが必要だと考えます。そして、それを自分のSNSを通じて発進することが一歩を踏み出すことに繋がるはずです。私自身、今の会社の社長と出会えたきっかけがSNS。その他に、上場企業の社内ベンチャーの社長や大学発スタートアップの経営者、プロ人材機構と出会えたのもSNS。発信をしないと誰にも目を留めてもらえないことを痛感しています。発信を続けることは大変だけど、シニアが活躍する場の広がりはそこにあると思っています。

編集後記

森さんは、日々SNSを通じて発信されている方。だからこそ触れているトピックの幅もあり、新たな出会いや繋がりから充実感を得られている印象を受けました。東芝時代の悔しさが、現在の森さんの力となり、これからの事業の軸になっていることも非常に興味深かったです。SNS発信により今の仕事環境を掴んでいる姿は、これから新たな一歩を踏み出したいシニアの方々に、大きな刺激を与えるのではないでしょうか。


TOP
TOP
PAGE TOP