【プロ経営者・松本康一郎さんに聞く、シニアが世界で活躍する極意】
株式会社プロ人材機構のインタビュー企画「LIFETALKープロ活用の深みに潜るー」。
今回は、プロ経営者として活躍されている松本康一郎さんに、ベトナムのスタートアップ企業に“ナンバー2”として迎えられた経緯や、海外で活躍するシニア人材に必要なことについて伺いました。聞き手は、シニア人材の価値を世界に伝えたいと考える押田が務めました。
目次
- 70歳、ベトナムのスタートアップに“ヘッドハンティング”
- 出会いのきっかけは「日本的経営」を伝える授業
- ベトナムで気づいた「経営理念の力」
- 海外で活躍するシニアに必要なこと
- シニアに「年齢」というレッテルは不要
70歳、ベトナムのスタートアップに“ヘッドハンティング”
押田:松本さん、先日に続いてのインタビューのお時間、ありがとうございます。実はどうしても伺いたいニュースがあって…ベトナムのスタートアップ企業から“ナンバー2”としてオファーを受けた、と聞きました。日本人が技術力やネットワーク目当てに海外企業から声がかかるのはありますが、「経営そのもの」を求められるケースは珍しいですよね。
松本さん:こちらこそ、ありがとうございます。そうなんですよ、もう70歳になる僕が、ベトナムの若い経営者と一緒に新しいことに挑戦できるなんて、本当にワクワクしています。
押田:素晴らしいですね。やはり積み重ねてきた歴史、経験にこそ、シニア人材の強みや価値があると思います。私たちはシニアの方が積み重ねてきた歴史や理念を「輸出」するべきだと思っているんです。ちなみに松本さんは具体的にはどのような役割になるんでしょうか?
松本さん:まだ明確に役割を区切っていなくて、お互いに知り合いながら進めていこうと決めています。
僕の信条は「実践と理論の両立」。コーチングだけじゃなく、現場に入ってチームと一緒にスタートアップの描く夢を、確かな成功へと育てていきます。

出会いのきっかけは「日本的経営」を伝える授業
押田:そもそもの出会いは、どういう経緯だったんですか?ベトナムの経営者に出会うって、なかなかないですよ。
松本さん:私の仕事の一つは、JICAの専門家としてベトナムの経営者の方々に経営を指導しています。そのときに僕の講義を受けてくれたのが、今回声をかけてくれた会社の経営陣でした。彼らは30代で、AIを活用したERP(※1)のスタートアップをやっている。講義内容に共感してくれたようで「ぜひ会社にも来てほしい」と言われてね。その心意気が嬉しかった。
押田:やはり理念に共鳴してくれる若い世代がいるというのは、嬉しいことですよね。私も現場でシニアの方々に伴走していると、伝えたい本質を受け取ってくれる若い世代との出会いがシニアの方にとっての活力になっていると感じます。
松本さん:本当にそう。最高ですよ。スタートアップの熱い現場で、僕の経験を注ぎ込むチャンスです。彼らも本気で、「結果を出したい」と口説いてくれた。3か月間は週2回、経営メンバーを中心に1on1をして、課題や計画を聞いていく予定です。
※1 Enterprise Resource Planning(エンタープライズ・リソース・プランニング)の略。販売・在庫・生産・会計・人事など 企業の基幹業務データを一元管理し、部門間でリアルタイム共有できる統合システム のこと。

ベトナムで気づいた「経営理念の力」
押田:なぜご自身が選ばれたのだと思われますか?
松本さん:ほんとそうだよね。CEOや経営陣と本気で向き合ったからじゃないかな。もう、全力で向き合ったよ。彼らからエネルギーをもらえるから、僕も本気で向き合えるんですよ。
そして、僕が驚いたのはベトナムの若い経営者たちが「経営理念」にすごく関心を持っていることだね。これは海外で求められていることだね。昔の日本企業が大事にしてきた、人や社会を大切にする経営。それに惹かれている。ちなみに今度、ベトナム語で、パーパスについての本を書く予定。日本人で初めてでは。
押田:それは本当に素晴らしいですね。私も現場でよく感じますが、やはり人は「なぜやるのか」に強く惹きつけられるし、そのパーパスが腹落ちするからこそ力を発揮できる。だからこそ、パーパスを語れるシニアが今、求められているのだと思います。
松本さん:その通り。だから、僕は今の仕事が楽しくて仕方ない。

海外で活躍するシニアに必要なこと
押田:日本のシニア人材が、海外のベンチャーで活躍するために必要なことは何でしょうか?
松本さん:「経営理念」を語れる人は求められる。あとは現場の改善ができる力を持つ人も必要とされると思います。そして一番大切なのは信頼関係を築く力。信頼関係を築くには、まずは自分から相手を信頼する姿勢が大事だと思っています。
押田:なるほど、私もそう思います。若い人に信頼されるには、まず自分が相手を信じること。経験や知識があるがゆえに上からになってしまう方も多いですが、信頼されるには謙虚さが必要ですよね。
松本さん:そう。嘘をつかない、誠実でいる、率直に言う。テクニックだけでは相手に見抜かれる。だからこそ本質的な付き合いをしたいですね。もう70歳ですし、残された時間は本当に大事にしたい。

シニアに「年齢」というレッテルは不要
押田:最後に、日本のシニアが世界で活躍するためのメッセージをお願いします。
松本さん:年齢のレッテルはいらない。85歳でもベトナムで講義してる人もいれば、若いのに元気がない人もいる。大事なのは、学び続けること、経験を積むこと、面白い人とのつながりを広げること。それが人生を豊かにします。僕の周りは面白い人ばかり。あなたもその一人ですよ(笑)。
押田:ありがとうございます。私自身、シニアの方が積み上げてきた歴史や価値を、もっと世界に広めたいと思っています。松本さんのように本質を伝えられる人が増えれば、日本のシニアはまだまだ世界で輝けると信じています。ベトナムでのご活躍、またぜひ聞かせてください!
日本のシニアが海外のベンチャー企業から評価され、活躍していく。その姿を伝えることが、これからの日本社会に必要だと、改めて強く感じたインタビューでした。
