本日の「プロ活用の深みに潜る」は、企業の経営参謀として活躍中の多田弁護士との対談です。プロ人材機構においても、先月より取締役COOとして押田が就任しております。二人が語るNO.2理論とはどのようなものでしょうか。
目次
- 孤独な経営者に必要な“ナンバー2”の条件とは
- 弁護士の殻を破った“壁打ち相手”としての役割
- “クリエイティブなディフェンス”ができる弁護士
- 自ら“ナンバー2”を選ぶ覚悟と哲学
孤独な経営者に必要な“ナンバー2”の条件とは
高橋:多田先生、本日はよろしくお願いします。
本日のテーマは企業に求められるNO.2ってどのような人なのか。という話です。経営者は孤独だと聞きます。私も3万人近い経営者とお話をしてまいりました。皆さん、それは話をされますね。
多田弁護士:本日はよろしくお願いします。
私も自らが経営者として会社経営を担っておりましたし、また弁護士として様々な会社を見てまいりました。やはり経営者は孤独ですよね。そして、私が痛感していることは、経営者に必要なのは、成果を出す人ではなくて、“決断できる状態”を整えてくれるナンバー2の存在ということなんです。
高橋:なるほど。多田先生は弁護士でありながら、起業家・保険会社の社長をつとめるという異色の経歴ですよね。弁護士としての視点だけでなく、自らもベンチャー経営をしている経験から、多くの企業のサポートを行っています。

押田:多田先生。本日はよろしくお願いします。
私は先月からプロ人材機構の取締役に就任いたしましたが、これまでは自分で会社を経営しておりました。専門は組織コンサルです。私が担当してきた会社を振り返ってみると、うまくいってる企業って、社長の隣には、確かに、“決断できる状態”を整えてくれるナンバー2の存在という方がいたような印象です。私の会社においても、そのようなナンバー2がいて、会社を支えてくれていました。
多田弁護士:そうですね。スキルや肩書きではなく、“社長のもう一つの脳(=ブレイン)”として、経営判断の重みを共に背負えるかどうかが鍵だと思っています。
高橋:よくありがちな話として、経営者は自分に近い人をNO.2として起きたがりますね。たとえば営業が得意な社長は自分と同じような営業を得意とするNO.2とか。
多田弁護士:そうですね。コンプライアンスでいうと、あくまでも最終責任者は社長なんですよね。決して他の役員ではない。成長している会社の社長って、自分が最終責任者という気概があるんですよね。そのうえで周りに相談することはあるでしょう。
押田:確かに営業もコンプライアンスも社長が楽をするためにNO.2がいるということを考え始めると組織が瓦解してしまいますよね。私は組織構築で多くの企業を見てきましたが、結局、社長が全てなんですよね。どのような人を周りに置いているかで社長のキャラクターが分かるように思います。

弁護士の殻を破った“壁打ち相手”としての役割
高橋:ところで多田先生、そもそも弁護士として“壁打ち”のような関わり方って、なかなか珍しいですよね?
多田弁護士:実は独立当初から、“社長の壁打ち相手になりたい”という思いがありました。特にベンチャー企業の方々は、スピード感を持って決断していく中で、法的リスクに対する感度を高めることが重要なんです。ただ、あくまでも法的リスクの話は私たち弁護士の武器だと思っています。むしろ、私たちの得意なことは言語化。言葉にすること。弁護士は弁で護る仕事ですからね。法律はあくまで手段。
押田:全く同感です。社長の考えていることや世界観をいかに言語化していくか。結局、永続的に組織を成長させていくためには、言語化して伝えていくことが非常に重要だと思っています。事業成長だけに偏重すると、どこかで成長が止まってしまう。さまざまな問題が起こって、みんなが疲れてしまう。事業成長だけではなく、組織成長を同時に図るべきだと思っています。そのためには言語化が非常に重要。言語化ができる人を探していると、たまたまその人が、弁護士だったり、シニアだったり。
多田弁護士:私が独立したときに、あるシニアの方に沢山のお客さんを紹介してもらったんですよ。で、その人がいつも言っていたのは色々な人と付き合うようにと。弁護士は弁護士とだけ付き合っているのではなく、若い人とか、他の職業の人とか。
押田:それは素敵な話ですね。多田弁護士は色々な方とお付き合いされている中で、どのような価値観が培われていったのですか。
多田弁護士:『これはダメです』と線を引くだけじゃなくて、『どうすれば実現できるか』ということでしょうか。法律はあくまでも武器。法律の枠組みの中で、どうやってビジネスの目的を達成するか。一緒に考えるパートナーという立ち位置でありたいと思っています。

“クリエイティブなディフェンス”ができる弁護士
高橋:そういえば、整理解雇のケースでもかなり踏み込んだ支援をされたとか?
多田弁護士:はい。法律上できるかどうかの判断だけでなく、社員一人ひとりのキャラクターや背景を踏まえて、納得のいく着地をどう描くかまで伴走するのを基本にしています。
押田:それってまさに“人事戦略”ですね。法務を超えている感じがします。
多田弁護士:そうなんです。僕が興味あるのは、AIでもできる法的処理じゃなく、社長と一緒に次の組織をどう作っていくかを考えるところ。ディフェンスの中にも“創造性”があると思うんです。
押田:なるほど。労務問題は非常にセンシティブな問題ですが、いろいろな会社を見ているとトラブルになっているケースも多いように感じます。多分、一人一人に丁寧に説明するという会社は多いのですが、法的な見地も踏まえながらも、より社員一人ひとりのキャラクターや背景まで含めて会話をしていく必要はありますよね。それができる人の必要性はありそうですね。

自ら“ナンバー2”を選ぶ覚悟と哲学
高橋:お話をお伺いしていると、多田先生は、ナンバーワンになれる資質があるのに、あえてナンバー2に徹してるって、ちょっと驚きです。
多田弁護士:いやいや、僕はナンバーワンの器としては不足です。歴史上の人物では、僕は我がふるさと播磨の出身の黒田官兵衛が好きなんです。天下を取れる器がありながら、あえて裏方に回って主君を支えた。そういうスタイルに共感していて…。
押田:自分が前に出るより、“誰かを立てて、その人のために戦略を練る”方が合っていると。
多田弁護士:そうなんです。もちろん、トップがいなければ自分が出ることもあります。でも本質的には、黒子の立場で動くのが性に合ってるんですね。
高橋:先生にとって“理想のナンバー2”ってどんな人物ですか?
多田弁護士:トップと同じくらいの視座を持ちつつ、その一歩後ろで支えられる人。必要なら前に出る柔軟さもありながら、常に“第二の脳(ブレイン)”として機能できる人物ですね。
押田:まさに今、先生が体現されている形ですね。経営者にとって、これほど心強い存在はありません。
多田弁護士:ありがとうございます。今後もそういう“ナンバー2”の視点から、企業を支えていけたらと思っています。
高橋:そうなんですよね。だから、私たちは思うのです。弁護士=企業の法務担当ではなくて。NO.2にふさわしい要件って何?社長の第二の脳が必要ですよね。それって言語化とか、一人ひとりと向き合う力とか。行きついた先が弁護士の方であったり、シニアの方であったり。
押田:そして、弁護士の方は法律という武器を持っている。シニアの方は経験という武器を持っている。そのような世界観ですね。

多田弁護士:まさに私が目指しているのは、そのような世界です。弁護士は法律にとどまるのではなく、もっとビジネスに入っていくべきだと思っています。そして、弁護士の持っているスキルは企業のNO.2として必ず役立てるスキルだと思っています。
わかりやすいのは、ジェネラル・カウンセル(General Counsel)やCLO(Chief Legal Officer)として経営に参与する弁護士。大企業だけでなく、中小企業にもそのような弁護士は大変役に立つはずです。
高橋:今回、押田を弊社の取締役として声をかけたのも近しい理由です。私は人材業界の経験が25年以上であり、事業については専門性を有していると思います。一方で組織構築については全く力不足。押田は“第二の脳(ブレイン)”として、私に不足している組織成長をサポートする役割を期待しております。
押田:私も先生の話を聞いて、自分が、なぜプロ人材機構に加わったのか改めて意味を再認識いたしました。事業成長と組織成長の両輪が整ってこそ会社は成長すると考えております。スタートアップでは事業成長を優先する企業が多い中で、プロ人材機構は将来の会社の姿を意識した上で組織成長の両輪を大切にする。プロ人材機構が目指す未来に向けて私も頑張ってまいります。

多田 猛(多田弁護士)プロフィール
弁護士法人Proceed代表弁護士/一般社団法人X-Legal協会代表理事/ブレイブ少額短期保険株式会社取締役。
ベンチャー企業・グローバル企業を支援する政府の「雇用労働相談センター」を福岡市・東京圏において立ち上げから参画。(現在は、東京圏、関西圏、広島県・今治市、仙台市の同センターの運営サポートを行う)
自身が代表を務める法律事務所でも、ベンチャー企業・グローバル企業を中心に数多くの企業の法務支援を手がけてきた。
さらに2016年から自らスタートアップとして起業し、2019年には令和初の保険会社であるフェリクス少額短期保険株式会社(現在は、事業譲渡によりフェリクス株式会社となる)を立ち上げている。