インタビュー『日比 優彦』さん

定年退職後に童話・絵本『アリとかげろう』を出版

―――――『アリとかげろう』への想い

30代に海外駐在をしている時に、バカンス先のサルジニア島(イタリア領)でこの物語の素案をしたためました。その素案を何度か再校し、退職後に出版に至りました。サルジニア島でラテン系、ゲルマン系、アングロサクソン系と様々な国・民族の様々な価値観・人生観に触れ、家族と楽しく充実した日々を送る中で、ふと自分の日本人としての人生観を改めて考える機会になりました。進学教室に通い、良い高校、大学に進み、そして猛烈に働く日本人、まさに画一教育で育った日本人の人生観て何なんだろう・・・

その時ふと「アリとキリギリス」の話を思い出しました。勤勉に働き続けるアリと、冬の支度もせずに人生を謳歌しているキリギリス、日本ではアリの生き方が美徳とされ、キリギリスの生き方は否定されています。

一方で「ウスバカゲロウ」という昆虫は幼虫の頃、何年間もアリを捕食(蟻地獄)しながら成長し、成虫になった瞬間わずか1日で儚い人生を終えます。人それぞれの人生、勝ち負けではなく、どう生きていくのか・・・

そんな想いをサルジニア島での人々との出会いの中で、「アリ」「キリギリス」「かげろう」という存在に重ね合わせて創作しました。子供向けというより、大人にも読んで頂きたい物語です。

―――――勤め先は日本企業

大学卒業後からずっと電通に勤めていました。20代後半から30代後半の約10年をイギリス、フランス、オランダに駐在し、現地での営業開発や合弁会社の経営に携わっていました。その後日本に帰ってからは、営業、グローバル担当として、クライアントのマーケティング・コミュニケーションに従事しておりました。

―――――帰国後も海外での気づきはプラスに?

私は東京・日本橋人形町育ちの江戸っ子です。祖父母が人形町で下駄と高級草履の製造・販売を営んでおり、周囲には頑固な職人気質の人が多く住んでおりました。下町で育った環境のせいか、人情と、ある意味での頑固さは自分の礎となっており、自分の軸というものは帰国後もブレずにいたと思います。ただ海外で学んだ多様性のある価値観や多くの経験は、日本に戻った後に自分のビジネスライフでもプライベートライフでも大きな影響があったと思います。下町で育まれた感性も、海外で学んだ価値観も自分の中に取り込み、常に「Stay Myself(自分らしくあれ」」でありたいと常に意識しております。

―――――現在の活動状況

現在はマーケティング・コミュニケーションに関するコンサルティングを中心に活動しております。7社ほどの顧問を務め、営業戦略や営業開発の支援を行っております。特に最近ではデジタル化やAIの発展により、産業構造が大きく変わっていく中、どのような組織にしていくのか、どのような人材を雇用すべきか、また社員に対してどのような教育をしていくか等のコンサルも行っております。

―――――これからの夢

少なくともあと数年間は今の仕事を続けていこうと思っております。

その後は、ワークライフバランスを大きく変えて、よりプライベートな時間を持つようにに大きくシフトしたいと思います。家族との時間を多く持って大好きな温泉旅行をしたり、昔駐在していた都市や暮らしていた家を再訪しゆっくりとそこで過ごしたり、また自分の創作の時間(童話・絵本)も作っていきたいですね。

そして最近ニュースを見ていても、相変わらず不確実で不公平な出来事が世界中で起きており、それによって多くの子供たちが苦しんでおります。具体的にはまだわかりませんが、自分が培ってきた経験や知見が何か活かせることがあれば、社会貢献の一助になる活動をしていきたいと考えてます。

編集後記
海外赴任中の経験が人生観を大きく変えたという日比さんの話は、ダイバーシティ(多様性)が求められる現代において、非常に説得力がありました。「STAY myself(自分らしくあれ)」これは、今を生きる私たちへのエールのようにも感じられました。

聞き手:三須亜希子(フリーアナウンサー)


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