インタビュー『鈴木 諭』さん

―――――最近の活動状況を教えてください

スタンダート上場されている中堅の化粧品会社の顧問を一社と、経済産業省独立行政法人中小企業整備機構の中小企業アドバイザーとして年間10件~15件くらいの案件に従事していて、どちらも海外進出のアドバイザリーとして関わらせて頂いています。

顧問をしている企業は、週1出社ですが、情報共有するだけじゃなく、打ち合わせにも随時参加し、資料作りなどもしています。日本でも実績のある化粧品会社なのですが、国内マーケットは中長期的に飽和している現状が否めなく、海外進出をはかろうとしていたため、タイミング良くお声がけ頂けた感じです。これまで勤めた組織としては全く異なりますので、社長や現場へのヒアリングを徹底しながら、企業そのものの強みを理解し、その一方で何が足りないのかを言語化した上で共有するなど、細かな部分からどのようにブランディングしていくのかを皆で模索しているところです。

―――――これまでのキャリアについて

大学を卒業してから60歳の定年退職までの38年間、資生堂で働いていました。資生堂時代は、商品開発も含めたマーケティング企画、海外事業の中長期計画、事業戦略立案推進などの業務に携わりましたが、中でも駐在した台湾とフランスをベースとしたアジア・ヨーロッパの現場経験はいろんな壁を乗り越えた時間でした。一言で海外といっても、日本のブランドをその地で展開するためには、コミュニケーションの取り方が全く異なるんです。アジアでは共通点をみつけてシンパシーを醸成することができるのですが、ヨーロッパは 対立点っていうか、相違点を見つけて、それをぶつけ合うっていうコミュニケーションをとらないと進まない。そこが重要だと言うことは、海外の現場を通じて深く学んだことです。

―――――退職後すぐに仕事に就かれたのですか?

定年退職してからは、1年ぐらい何もやらないでリフレッシュしようと。好きな本を読んだりしながら過ごそうと思っていたんですけど、だんだん退屈してきたんですよね。そのタイミングで 大学の同級生からフランスのネイルエナメル製造会社の日本支社でグローバル人材を育てる取り組みがあるからやってみない?と声をかけられたんです。その会社では、自分のノウハウをいかして事業の長期戦略を考えるなどをしましたね。3年計画を作ったんですけど、勤めて1年位でミッションをやりきった気がして。そのタイミングで自分から退職しました。ただ、その職場を通じて、シニアにもミッションがあって、経験を活かして社会に貢献できることがあるということに気付かされたんですよね。とはいえ、辞めた後に仕事をしたい気持ちはありながらもどこに行っていいかわからなくてというのが現実でしたが。その後に行ったのはハローワークだったんですが、有難いことに、化粧品事業を新たに手掛けようとしている会社のお話をいただき入社しました。入って1ヶ月で執行役員になったんですけど、社内の雰囲気も思っていた環境と違ったこと、さらには毎日8時半から18時半までの勤務しかも年間休日が105日、これは年齢的にも長く働く場所ではないなと感じて新規事業戦略企画を完成提案することで区切りをつけて自ら退職しました。一つの企業で長い期間働くのとは異なった方法、つまり1年間などの区切りのあるプロジェクトで使命を果たして行く、新たなスタイルで自分の役割を果たせる場所を発見できたことが今の働きかたに繋がっていると思います。

―――――シニアらしい働き方とは?

定年退職後に1年や半年ちょっとと短いスパンで職場を変えたわけですが、次がなかなか見つからないことへの不安がなかったわけではありません。だけど、やめる決断を早く出すチャレンジができたのは、もう60歳を過ぎてるし、子どもも就職しているし、変に我慢したり、自分を過小評価した中で働くよりは、自分にとっていい職場と巡り合うまで待つというのが重要かなって思ったからです。働き盛りの人たちでは選べない選択の形が取れるのが、シニアの働き方だと思っています。その仕事自体をしっかりと生きがいにするためにも、どんな仕事をするのか、環境が自分にとってどのようなものなのかを自ら判断して選択することが大切だと思うんです。おそらく顧問やアドバイザー的な立場を選ぶ方は、そういったパターンだと思います。暮らしのためにというよりは、自分の人生のために。やりがいや暮らしを潤わせるところを大切にできるのが、シニアができる働き方のように感じています。

―――――これから活躍したい方へ

自信を持つことが大事だと思っています。実は、自分も自信がなかったんです。 38年もずっと1つの会社にいたから、そこのルールしか知らないし、そこの仕事のやり方しか知らないし、それがどこでも汎用性があるかどうかってわからなかったですね。だけど、いろんなタイプのシニアを社会が求めてることを知りました。プロジェクトリーダーをするシニアもいるし、潤滑な人間関係で連結ピンとして活躍する人もいるでしょうし、トップの参謀として顧問的に関わる人もいる。いろんなパターンのシニアが活躍できると思うんですよね。僕なんか化粧品会社しかダメだと思ってけれど、そんなことなかった。新しい場所で若い人とも出会えるし、面白いこともあって。シニアだから、楽観的な思考でいいと思う。失敗したっていいと思うし、自分のタイミングで足を止めることができるわけです。自分の周りの元気なシニアの共通点は働いていること。ぜひ一人でも多くの人に、自信をもってチャレンジしてほしいと思います。

編集後記

鈴木さんは、長年勤められた資生堂を退職されてから、社会における自分の価値に改めて気が付いたと嬉しそうに話して下さいました。シニアだからこそ、自分軸で仕事環境を選択する。鈴木さんの言葉から、シニアにとって働くことは、人生をより豊かにするためのファクターであることを痛感させられました。


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