インタビュー『河合 光和』さん

シニアもチャレンジャーであってほしい

―――顧問としての活動状況を教えてください。

4社です。そのうちの3社は、これからの日本に必要とされているいわゆるスマートビル関連のベンチャー企業です。ちょっとしたビルのフロアを想像して欲しいんですけど、日当たりの違いもありますから、そのフロアの窓際と部屋の中心部はそもそも温度が違うはずですよね?でも日本の多くのビルの空調は一律に設定されていて、同じ温度で噴出している。窓際はちょうど良いけれど、部屋の中心だと寒いといったことがあるわけです。これをAIによって、それぞれの場所ごとの空調をその日その日の日照時間など含めて適温になるように吹かせる設備などが整っているビルをスマートビルと呼ぶんです。地球温暖化のために、二酸化炭素削減っていう観点からとても大切なことなんです。今後の成長が期待されている分野ですけど、日本は世界より遅れているのが現状です。今までなかったものを世の中に広げていきたい。自分がベンチャー企業を支援し、大手企業との橋渡しを私が培った引き出しからサポートすることによって、業界の成長を促したいと思っています。

―――「鹿島」の営業マンとして磨いてきたものとは?

私はゼネコンで何十年も営業マンやってきました。大企業ほど役割分担がされていますから、ゼネコンにいたからといって設計に詳しいわけではないんです。だからこそ当時から、向き合う相手とのコミュニケーション、関わり方を大切にしてきました。簡単に言うと、相手のことをたくさん知ろうとすることです。たとえば、関わる人のご家族におめでたいことがあったら、一緒に喜んだりお祝いをするわけです。相手が嬉しいことは、自分にとっても嬉しいことになるくらい寄り添う。営業という仕事を通じてよりよいコミュニケーションをとっているだけなんですけどね。今顧問をしている企業は、前職と繋がりやすい業界なので経験を活かしやすい点もありますし、これまでのコミュニケーションによって繋がっているところが殆どです。

―――顧問として、具体的にどのような役割を担われているのでしょうか?

私がゼネコンにいたからわかっていることは、例えば大手であれば大手であるほど、新しい企業はなかなか会ってくれないということ。大手企業から見て知らない会社はそもそも大手の事業に入りこむことが難しいわけです。ですが、私は長くこの業界にいたので、大手のゼネコンにも商社にも設計ファームでも繋がりがあるから、顧問を務めている企業が新しい企業であっても、みんな会ってくれるんです。実際に会ってもらって、こういうことやっているって話すと、入り口がバッと開いて、「面白いことやっているから一緒にやろうか。」みたいになることがあるんです。

―――仕事において大切なこととは?

誰かに会って仕事をする時に、そのビジネスのことを真剣にするっていうのは当たり前で、誰でもやることなんですけど、通り一遍の事だけやっていると差別化されない。私は、その人のバックグラウンドを知るなど相手を知った上で、どういうアプローチをすればよいかを考えることを大切にしています。

人の繋がりって、実はすごいパワーを持っていて、すごい立場の人だととくに近寄りがたいと思うんですよね。だけど、学生時代の先輩後輩といった関係性があったりすると、社名とか立場とかを越えて垣根がなくなったりするわけです。どんな商売でも同じだと思いますけど、人と人との付き合いですから、ものごとを上手く進める上では、その人となりを知ってコミュニケーションをとることが必要だと思うんです。

―――シニア世代がこの先も現役として社会で活躍するために

1つの会社に長く在籍していると、特定の会社のマネジメントしか分からない人が多い。今のシニアはそういう人が多いと思う。だからこそ、自社でない他の業界へ移った時に役に立つスキルを身に付けて欲しいという事です。私の周辺にも、メガバンクで10年近く上海や香港の中国畑で、そこから防衛産業やホテルマネジメント会社に転身した同級生がいますが、例えば台湾の観光会社からとかホテル会社からとか引っ張りだこです。それは中国語と英語、もちろん日本語が出来て、金融やホテルマネジメントがわかるので、海外の会社で日本での事業展開を図る会社や、日本企業でも中国からのインバウンドとビジネスをしたい企業はものすごく沢山あるからです。それはシニアの一つのロールモデルだと考えます。

―――シニア世代がますます活躍できる社会に向けて

私たちがお手伝いするスタートアップ企業は、教育面にお金も時間もかけられない。だからこそ、シニアへの教育の場も必要だと考えています。そして、シニアもチャレンジャーであってほしい。今までは部下がいる環境に身を置いていた人が多いと思いますが、組織を離れたこれからは、知らないことは教わらないといけない。フラットな人間関係への意識をもって、認識のギャップを修正しながら柔軟に活躍してくことが必要だと思う。そういう姿が増えれば、シニアの働き方に広がりが見せられると思うし、ハローワーク以外にもアクセスする場所を知ることに繋がると思います。その動きが広がれば、シニア世代も世の中に対する役割を果たし、より求められる存在になる社会になるはずです。

編集後記

河合さんは、お会いしてすぐに打ち解けられ、会話が興味深い内容に展開される方。関わる誰もが、コミュニケーション能力の高さに納得せざるを得ない存在です。日々あらゆる技術が進化し、AIによって様々なサービスの形が変化を遂げる時代において河合さん自身も日々アップデートされていらっしゃることを話の端々から感じました。改めて、人と人が向き合う上でのコミュニケーション能力は、一個人にとって勝負できる強みなんだと気づかされました。

ゼネコン時代に世界を股にかけて活躍され得た能力で、関わる若い企業の成長をサポートすることを自身の役割として取り組む河合さん。間違いなく、これからのシニアたちが活躍する姿=ロールモデルのように思います。


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